【読書日記2】 村田沙耶香「コンビニ人間」 世界に拒絶された人々の物語
こんにちは、きいまです。
村田沙耶香さんの「コンビニ人間」の感想を書きたいと思います。数年前に芥川賞をとった有名な作品です。わたしにとっては胸の痛くなるような衝撃的な小説で、まだ読んでいない方はぜひ読んでほしいなと思います。
世界に拒絶された人々の物語
世間とか常識とか普通とか、大きく言えば世界とかそういったものから外されているなとかずれているなと少しでも感じたことがある人は多いと思います。そのなものくそくらえと強く生きられる人も中にはいると思いますが、周りの同調圧力につぶされそうになって、泣く泣く自分を曲げて周りに合わせて生きていく人が多いでしょう。「コンビニ人間」の主人公はそれが上手くできなくて、むしろどこが普通と違うのか、どうしたら同じになれるのかわからない人物と言えます。
ある意味主人公古倉さんは純粋で真面目。強大な世界というものから弾かれても、それでも何とかして世界で生きていくため試行錯誤して、辿り着いたのが”コンビニの店員”になることでした。
同じように世界から外されている白羽
古倉さんが働いているコンビニに入ってきたのが新人バイトの白羽さんです。彼も同じく世界から拒絶された人物で、白羽さんはあきらかに世間と上手くやっていけるタイプではなく、一見古倉さんの仲間であるかのように思われます。彼によって古倉さんの人生に変化が訪れます。
古倉さんの選んだ答え
「コンビニ人間」のラストには賛否両論あると思います。古倉さんにとって世界そのものであり、どう生きるべきか(どう店員として振る舞うべきか)あらかじめ決められていて唯一彼女が生きていくことのできるコンビニが、ある出来事で変化していき、彼女の生きていける場所ではなくなってしまう。外から本当の世界が流入してきて、コンビニも今まで散々古倉さんを拒絶してきた世界と同じものだったことがわかっていきます。そして白羽さんによって新たに生きる道も提示される中、彼女が選んだ答えが必ずしも小説的ではなくても、ドラマ的ではなくてもわたしには人間らしい納得できる答えだったのだと思います。
小説のラストに成長や進化を求めるのは、世界に除外されていない人間側からの理論であって、「コンビニ人間」のラストはそんな理論では押し測れないようなものだと思います。
まとめ
この小説には 「コンビニ人間」というライトな題名や本の薄さからは想像できないような人間の生きづらさが描かれています。
個人的には生きづらくてつらいよねとか、かわいそうにとか、一緒にがんばろうみたいなところが一切なくて、徹底していて救いがないところが好きです。予定調和ではない小説です。
わたしの偏見ですが、小説を読む人は少なからず世界からずれていてそれを読書で補完している人が多いのかなと思うので(違ったらごめんなさい!)この作品はとてもおすすめです。ぜひ読んでみてください。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。